がんを防ぐメカニズム |
はじめに
がん発症のメカニズムは、既に「トルーレイキ療法」の「健康教室」で詳しく説明しています。
「がん発生のメカニズム1(内的要因)」
「がん発生の機構2(外的要因)」
従いまして、ここでは既に行った遺伝子異常の説明は省略して、がん防御のメカニズムを簡潔に説明します。
1.がんを防ぐ体のメカニズム
ヒトはがんの発症を以下の3つのレベルで防いでいます。
A) 遺伝子(DNA)レベル:修復遺伝子による修復
B) 細胞レベル :アポトーシス(異常細胞の自殺)
C) 免疫レベル :免疫細胞によるがん細胞の抹殺
次に、各レベルの防御機構を簡単に説明します。
A) 遺伝子(DNA)レベルでのがん抑制
私達の体は、大体60兆個の細胞から構成されています(体重60キログラムの場合)。
この膨大な細胞の多くは細胞分裂を繰り返していますが、このとき遺伝子(遺伝情報)の貯蔵庫であるDNAも正確にコピーされます。
しかし、細胞分裂でコピーするDNAの数はあまりにも膨大であるため、遺伝子のコピーエラーが生じることは不可避と言えるでしょう。
また、コピーという過程を経なくとも、活性酸素やラジカルなどによって、日常的に遺伝子が傷つけられています。
そのため、本来であれば、時間と共に遺伝子異常は急速に増大するはずです。
幸い、遺伝子の中には各種のDNA修復遺伝子があり、生じた異常を元に戻してくれます。
しかし、修復遺伝子に異常が生じて、修復機能がオフ(不能)になりますと、遺伝子異常が増えていくことになります。
さらに、細胞分裂を調整する遺伝子が異常になると、がん細胞になる可能性が出てきます。
具体的には、細胞分裂を促進する遺伝子がオン状態に、細胞分裂を抑制する遺伝子がオフ状態になることです。
結局、遺伝子異常として、最低限
修復遺伝子の活動 停止
細胞分裂抑制遺伝子の活動 停止
細胞分裂促進遺伝子の活動 活動継続
の3つの異常があれば、がん細胞になります。
そして、がん細胞の増殖につれて遺伝子異常が増えていき、がん細胞は悪質化していきます。
B) 細胞レベルでのがん抑制
しかし、遺伝子の修復が不可能な場合、本来、その細胞は自ら自滅する(アポトーシス)ように誘導されます。
従って、がん細胞などの異常細胞は発生しないことになりますが、この細胞レベルの防御機構が働かない場合、異常遺伝子を持つ細胞の分裂が起こります。
細胞分裂が起こると、分裂した新たな細胞は新種生物(がん細胞)として誕生したことになります。
なお、異常遺伝子を細胞死に導く過程(アポトーシス)に、(細胞小器官である)ミトコンドリアが関与しています。
ミトコンドリアが衰えている細胞では、細胞が異常になってもその細胞の自滅(アポトーシス)が誘導されなくなります。
実際、がん細胞ではミトコンドリアの数が非常に少なくなっています(活動低下)。
視点を変えれば、ミトコンドリアを元気にすれば(数を増やせば)、がん細胞を消滅させられます(確認されています)。
ミトコンドリアが不活性になる条件
ミトコンドリア活性を低下させる主な条件として2つあります。
1.低体温(ミトコンドリアが数を増やして活発に活動出来る温度は37度から38度)
2.酸素・栄養素不足
これら以外に、ミトコンドリア活性を低下させる主な条件として、日光不足、pH低下などがあります。
条件1.、2.から分かりますように、ミトコンドリアを不活性にする最大要因は、血流障害です。
C) 免疫レベルでのがん抑制
運悪くがん細胞が発生しても、最終防衛レベルとしての免疫系によってがん細胞は滅ぼされます。
実際、がん細胞は、毎日、数千個(から一万個)程度発生していると考えられています。
従って、免疫力ががんの増殖を防止しているおかげで、私達はがんの危険性から護られているわけです。
言い換えれば、免疫力が低下していると、発生したがん細胞を抹殺できず、がんの増殖を招く危険性があります。
そして免疫力が低下する最大の原因は血流障害です。従って、B)の「細胞レベルでのがん抑制」も免疫レベルでのがん抑制といえます。ミトコンドリア活性も免疫力の一部だからです。
従って、がん防御のシステムは、
遺伝子(DNA)レベル:修復遺伝子による修復
免疫系レベル :アポトーシス(異常細胞の自殺)及び免疫細胞によるがん細胞の抹殺
とした方が良いのかもしれません。
2.がんになる理由
基本的に放射能や食べ物などによるがんを心配する必要はない
2011年の東日本大震災で放射能の危険性が非常に強調されました。
強い放射能が有害であることは言うまでもありません。放射能が有害である主な理由は、体内で活性酸素を発生させるからです。
しかし、体内防御力である免疫力で対応できないほどの放射能を浴びれば問題ですが、メディアで問題にされた放射能は、自然放射能や私達の体内で発生させている放射能、さらには私達が日常的に食する多くの食べ物よりも極端に低い放射能を問題にしていました。
例えば、神奈川県で福島産のミカンからKg当たり100ベクレルの放射能が検出されたので、抗議運動が起こり、福島の生産者が自殺されました。しかし、100ベクレルの放射能は多くの食べ物にとって普通の値です。例えば、納豆はKg当たり201ベクレルの放射能、乾燥こんぶはKg当たり1611ベクレルの放射能があります。従って、福島産のミカンを攻撃する理由はありませんでした。
放射能の強い食べ物は、(カリウムの同位体が放射能を持っていますので)食塩の多い(辛い)食べ物ですが、それらの放射能を気にしたことがあるのでしょうか。
かって、メディアで問題にされた放射能量を問題にするなら、非常に強い放射能を浴びるX-線撮影は禁止すべきです。CTスキャンなどは、論外と言えるでしょう。また、放射線を余分に浴びる飛行機にはとても乗れないはずです。あのときの放射能に関するマスコミ騒動には、実証に基づく科学とかけ離れた異常性がありました。
大切なことは、継続的に免疫力を下げないことです。
その意味では、普通の食生活であれば、食べるものを余り気にする必要はないだろうと思います。
基本的な考え方は、肝臓による毒素の分解、腎臓による毒素の排出で継続的に肝臓や腎臓に負担をかけないことです。負担をかけ続けると肝臓や腎臓の疲労を招き、やがて臓器不全になります。
同時に、これらの臓器に負担をかけることは体内に毒素を蓄積することになります。
従って、そのような食品や薬物などを摂り続けない限り、問題ないでしょう。
免疫力を下げる危険性のある食品です。
食品とは言えないでしょうが、ヘビースモーカーは、日常的に免疫力を(多少)下げている危険性があります。ただ、確かなことは分かっていません。
お酒も量が多いと問題です。お酒を飲むと肝臓が膨らみます。しかし、お酒を飲んで肝臓が膨らむのは、正常な反応です。次の日には縮むからです。しかし、毎日たくさんのお酒を飲むと肝臓は膨れたままになります。これが問題です。
さらに酷くなるとお酒を飲んでも肝臓が膨れなくなります。こうなると末期です。
薬も同様です。たくさんの薬を一生飲まされる高齢者の方が少なくありません。
しかし、3種類以上の薬の副作用は誰にも分かりません。誰れも調べないからです。例えば、薬をわずか100種類に限定しても、3種類の組み合わせだけで161,700種類あり、とても臨床試験など出来ません。
しかも、年を取るほど新陳代謝が低下するので薬を解毒する能力が低下し、薬はどんどん有害化します。
油もオメガ6系だけでなく、オメガ3系(エゴマ油や魚油など)をバランス良く摂れば良いのですが、日本人の場合、オメガ6系を圧倒的に多く摂っているのが問題です。
このような問題はありますが、本質的な問題は免疫力を下げる要因を減らすことであり、自然食云々などは有意かもしれませんが、個人的には些末な問題だろうと思っています。
胃かいようや胃がんの原因がピロリ菌であるという奇妙な医学的妄想があります。
これは、1994年にWHOでピロリ菌ががん因子であると報告されたからです。しかし、50歳以上の人でピロリ菌を持たない人は殆どいません。
もし、ピロリ菌が胃かいようや胃がんの決定的因子であれば、熟年者は、殆どすべて胃かいよう、そして胃がんになるはずです。しかし、これは事実に反します。
従って、胃かいようや胃がんになる人と、胃かいようやと胃がんにならない人の違いは,本質的に
ピロリ菌の有無ではないと考えて良いでしょう。
また、肝炎ウイルスが肝臓がんの原因と考えられています。
例えば、C型肝炎ウイルスに感染すると約70%の人が肝炎になり、さらに肝硬変、最終的に肝臓がんというコースをたどることが少なくありません。
しかし、C型肝炎ウイルスに感染していても発症する人としない人がいます。また、発症しても肝炎から肝硬変になるまでの期間が人によって大きく異なります。つまり、肝炎ウイルスが原因であるとしても、免疫力が発症の有無に大きな影響を与えているように思います。
また、肝硬変は慢性肝炎が進んで細胞が繊維化する症状ですが、一般にこの段階になるまでに長年月が経過しています。従って、ウイルス以前にがんの発症条件が整っています。
ただ、子宮頸がんなどはウイルスが決定的要因であることは間違いないでしょう。
私自身、子宮頸がんの方に対処したことがありますが、全く手応えが感じられませんでした。他の固形がんの場合には、どのような段階にあっても、それなりの手応えがあるのですが、子宮頸がんに対しては無力感に打ちのめされました。
1.の「がんを防ぐ体のメカニズム」で説明しましたように、がんを発症する最大の理由は局部的な免疫力低下の長期化であり、局部的な免疫力低下を招く理由は、局部的な血流障害です。
また局部的な血流障害は、局部での細胞の壊死(えし)や病原体の繁殖を招き、炎症を誘発します。
従って、慢性炎症ががんを誘発すると考えられるようになってきましたが、がん誘発の本質的な要因は長期的な血流障害であるはずです。
では、なぜ局部的な血流障害を招くのでしょう。体の機能を調整しているのが自律神経であることに留意すれば、血流障害が慢性ストレスによって生じることが分かります。
従って、次回は、慢性ストレスとがんや慢性炎症との関係を説明する予定です。